2024年に成立した改正民法により、離婚後の親権に関するルールが大きく変わる。これまでの「単独親権」制度に加え、父母の双方が親権を持つ「共同親権」が選べるようになるのだ。施行は2026年5月までに予定されており、新たに離婚するカップルだけでなく、すでに離婚した人たちにも影響を及ぼす可能性がある。
では、共同親権が導入されると生活はどう変わるのか。実際に離婚を経験した親たちの声をもとに、不安や疑問を専門家に聞いた。
◆「元夫には逆らえない」──DV被害を語る母親の不安
長野県に住む40代の女性は、数年前に離婚し、現在は小学生の子どもと二人で暮らしている。親権者は女性で、元夫とは物理的な距離を取りながら育児をしてきた。
離婚の原因は、元夫の暴力的な言動だった。物を壁に叩きつけたり、ドアを激しく殴ったりする姿に、恐怖を感じてきたという。「些細なことですぐに怒り出す。何をされるか分からないので、強く言うことができなかった」と語る。
子どもへの直接的な暴力や暴言はなかったものの、女性自身は元夫から一度身体的な暴力を受け、それが離婚の決め手となった。
◆調停では「いい父親」と見なされた過去も
離婚時の調停では、元夫の暴力的な性格を証明する物証が少なかったため、「子どものことを熱心に考えている良い父親」と評価された。DV被害を主張するために、精神的にも時間的にも大きな負担を強いられたと女性は振り返る。
改正民法では、DVの恐れがある場合には共同親権ではなく単独親権とすることが原則とされている。しかし、元夫から「共同親権を求める調停」を起こされた場合、自分の主張が再び受け入れられるか不安だという。
「もう一度あの調停の日々が来るかもしれないと思うと怖い」と語る女性は、現在交際中の男性との将来も見据えている。「再婚して穏やかに暮らしたい。元夫にこれ以上、生活に干渉されたくない」と切実な思いを抱いている。
◆専門家の見解:慎重な判断が必要
この女性の不安に対し、家族法の専門家である早稲田大学の棚村政行名誉教授は次のように答える。棚村氏は法制審議会の家族法制部会の委員として、共同親権の法改正に深く関わってきた。
「DVやハラスメントがあった場合には、当然ながら共同親権は適さない。家庭裁判所はその点を慎重に判断すべきですし、制度上も配慮されるようになっています。重要なのは“子どもの利益”が第一であるという視点です」
共同親権導入の背景には、離婚後も子どもと両親が継続的に関われるようにするという理念がある。しかし、実際の運用においては、家庭ごとの事情に応じて柔軟かつ慎重な判断が求められる。
今後、法の施行に向けて家庭裁判所や関係機関がどう対応していくか、当事者たちは注意深く見守っている。
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